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先輩は、第二音楽室にいるらしかった。
それは特に珍しいことではなく、吹奏楽部が練習をする第一音楽室の隣の教室で、先輩はよくピアノを弾いている。
幼いころから習っていたらしいピアノはとても上手で。
先輩の繊細な指先に触れられた鍵盤は、胸を締め付けられるくらいに切なげ音で鳴くのだった。
階段を上り、音楽室がある廊下に出れば、その旋律が優しすぎるくらいに優しく鼓膜に触れた。
好きだ、好きだ、好きだ。すごく。
泣くな、泣くな、泣くな、まだ。
吸い寄せられるように教室に近付く足は、自分のものではないようだった。
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