寂時雨

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「なんで鈴花ちゃんはいつも傘を差しているの?」 「佳哉くんだけに教えてあげる。人間はね、全知全能で生まれてくるの。ぜ~んぶ知ってるってこと。この世の中の全ての物事を、国語算数理科社会じゃなくて、感覚で全て理解できるの。赤ちゃんの頃はママの表情全て読めてたでしょ?どうすればママを思い通り動かせるとか。何を考えているとか。なんでも分かっちゃうの。でもね、この世界に見下ろされたり、大人たちの息吹を吹きかけられたりする度に、その感覚って磨り減ってくるの。それと、単純に時間の経過なんかも関係ある」 「へぇ~なんか全然分からないけど、鈴花ちゃんってすごいんだね」 「私は佳哉くんも守りたいからこの話をしてるの!それら全ての悪影響を、傘が受け止めてくれるの。身を守ってくれるの」 「つまりどういうこと?」 「できるだけ、いつまでも忘れないでいれるってことだよ」 「う~ん、やっぱ僕分かんないや。でも、明日から傘差して学校に行く~」 「なんだか嬉しい。明日から一緒だね。あと、今した話は二人だけの秘密だからね」 「わかった~。あとね、僕ね、鈴花ちゃんのことずっと好き」 「私も、佳哉くんのこと好きだよ」 「忘れずにいたら結婚しようね」 「忘れずにいたら・・・・・・ね」
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