恋って残酷――

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 俺の問いに答えないままで、ヤツはまた一本、懐から煙草を取り出して唇に銜え込んだ。そしてもう一本を俺に差し出しながら言った。 「もう一服してくか」 「え!? あ、ああ……いいけど……」  クイと首を傾げて風を避け、デカい掌で囲いながら火を点ける……。 「確かにな――吸わなきゃやってらんねえこともあるわな」  煙たげに細められた瞳の上をユラユラと紫煙が立ち上っては消えていく。  まさか――まさかだけどさ。こいつの好きな奴って……。  まさか――な。ンなことあるわきゃ……ねえよな。  けど、さっきのこいつの態度、怒り、あれってもしかすると……もしかしたりなんか……する?  万が一の想像に、思わず頬が熱を持つ。ドキドキと心拍数が速くなる。  そんな思いを紛らわすように、俺もまた一服、ヤツの点けてくれた煙草を深く吸い込んだ。 「……な、(りょう)」 「ん?」 「お前って……その、好きな奴とか……いる?」 「いるぜ。お前――」そこで一旦言葉を止めて、ヤツはじっと俺を見つめた。見つめたというよりは凝視してるって方が当たってるくらい、鋭い視線を外してはくれない。「――はどうなんだ」 「え!?」  ンだよ! 疑問符かよ! つまり、『お前はどうなんだ?』そう訊きたかったわけかよ!  焦って損した。そんな気分のままに、俺も同様にカマをかけてみたくなった。
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