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揺らぐ心が支えきれなくて、こうして隣に座っていることさえ辛くなって、堪らずに胸ポケットの煙草を口に銜え、火を点けた。
昼休みのガッコの屋上、そんなことは分かってる。
見つかったらマズイってことも分かってるさ。
だけどとめられなかった。煙草一欠片、今のどうしようもない気持ちを鎮めるのに頼って何が悪い。
自分でも説明のしようがない、モヤモヤとした苦しい気持ちごと吐き出すように、深く煙を吸い込んだ。
「何やってんだこのバカッ! ココどこだと思ってやがる」
眉間に少しの険をたてて、ヤツの指が俺の唇から煙草を取上げた。
ご尤もな台詞だ。
学校で煙草を吸っちゃいけませんよ、それ以前に未成年が何やってんですか。
言わずとも視線がそう物語っている。少しの侮蔑と苛立ちが混じったような表情で、ひん曲げられた唇の端をヒクつかせながら、『手間をかけさせるな』とでも言わんばかりにこちらを見据えている。
親友への説教ですか。
ああそうですか。
そういうてめえはどうなんだ。好きな野郎に『好きです』のひと言も云えない間抜けなくせして、他人に説教してる場合かよ?
あ――、『好きです』が言えないのは俺も同じか。
何だかどうでもいい気分にさせられる。そんな気持ちのままに、
「吸わなきゃやってらんねーことだってあンのよー」
背後の壁へともたれながら、俺はちょっと大袈裟なくらいの溜息をついてみせた。
◇ ◇ ◇
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