恋って残酷――

4/12
前へ
/12ページ
次へ
 揺らぐ心が支えきれなくて、こうして隣に座っていることさえ辛くなって、堪らずに胸ポケットの煙草を口に銜え、火を点けた。  昼休みのガッコの屋上、そんなことは分かってる。  見つかったらマズイってことも分かってるさ。  だけどとめられなかった。煙草一欠片、今のどうしようもない気持ちを鎮めるのに頼って何が悪い。  自分でも説明のしようがない、モヤモヤとした苦しい気持ちごと吐き出すように、深く煙を吸い込んだ。 「何やってんだこのバカッ! ココどこだと思ってやがる」  眉間に少しの険をたてて、ヤツの指が俺の唇から煙草を取上げた。  ご尤もな台詞だ。  学校で煙草を吸っちゃいけませんよ、それ以前に未成年が何やってんですか。  言わずとも視線がそう物語っている。少しの侮蔑と苛立ちが混じったような表情で、ひん曲げられた唇の端をヒクつかせながら、『手間をかけさせるな』とでも言わんばかりにこちらを見据えている。  親友への説教ですか。  ああそうですか。  そういうてめえはどうなんだ。好きな野郎に『好きです』のひと言も云えない間抜けなくせして、他人に説教してる場合かよ?  あ――、『好きです』が言えないのは俺も同じか。  何だかどうでもいい気分にさせられる。そんな気持ちのままに、 「吸わなきゃやってらんねーことだってあンのよー」  背後の壁へともたれながら、俺はちょっと大袈裟なくらいの溜息をついてみせた。 ◇    ◇    ◇
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

230人が本棚に入れています
本棚に追加