恋って残酷――

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「おい、予鈴だ。そろそろ戻るぞ」  俺の消沈なんか全く眼中にない調子で、ぶっきらぼうにヤツが言う。  分厚い雲に覆われた空も、じっとりと重い湿気がまとわりつく空気も、何もかもが落ち込む気持ちを(あお)ってきやがるようで、居たたまれない気分になった。 「フケる――」 「はぁ?」 「次の時間、フケるっつったの! てめえは先行けや」  思いっきり視線を反らしながらふてくされてそう言った俺の態度に、ヤツの呆れた溜息が小さな音を立てた。  これ以上は言っても仕方がないと踏んだのか、しばらくの沈黙を置くと、ヤツは静かにこの場を立ち去って行った。  恋って残酷。  愛って過酷。  ダチって薄情。  俺は……惨め。  相思相愛なんてクソ食らえ、じゃん――!  ガツン、とフェンスに一発拳をくれて、皺くちゃになった煙草をもう一本取り出して銜えた。  ふと、その煙草の先にライターの火が差し出されたのに、驚いて隣を振り返れば、若干バツの悪そうな表情で苦笑いを浮かべたヤツが(たたず)んでた。
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