恋って残酷――

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「やっぱ付き合う――」  そう言ったヤツの唇にも同じように煙草が一本銜えられていて――  くゆらしたそれを煙たそうに細められた瞳が、遠くの空を見つめていた。  こんな仕草は堪らない。やっぱコイツってめちゃめちゃイイ男じゃん。  そう、憎らしいくらいにすべてが俺好みなんだ。容姿も仕草も何もかも、それこそ残酷なくらいにソソられる。  なんで戻って来るんだよ。  どういうつもりで戻って来たんだよ。  とてつもなくホッとする気持ちと、より一層落ち込む気持ちとが交叉していた。  やっぱダメだ。渡したくない――  幼馴染みだっていうあの男にも、いつでもこいつを取り巻いてキャアキャア言ってるクラスの女たちにも、時たま校門の前でこいつを待ってる隣の女学園の女たちにも、誰にも盗られたくない。  そしてできることなら――俺を見て欲しい。例えば気まぐれだっていい。何ならカラダだけだっていい。遊びでも欲求処理でも何でもいい。俺を求めてくれたらどんなにか――!  贅沢な望みだって分かってる。叶うはずのない想いだって分かってる。  いつか――こいつから『恋人ができた』って言葉を聞かされる時が来たら、俺はどんな顔で”おめでとう”を言うんだろう。未来を想像すれば、胸がズキズキと大袈裟なくらいの音を立てて痛み出した。
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