230人が本棚に入れています
本棚に追加
「は――! バッカよね、俺も……」
思わずこぼれちまった独り言と共に、不思議顔をしたヤツと目が合った。
「おい、泣きそうなツラしてどうした――?」
煙草をひねり消したヤツが怪訝そうに覗き込んでくる。俺、そんな面してたってか?
「……別に。何でもねって」
情けない声で苦笑いしてごまかした。
「何でもねえってツラじゃねえだろ」
しつけえって! 俺のことなんか、大して心配でもねえくせしてさ。
でもそんなに言うなら本音をぶつけてみるのも悪くねえかも。そう思って、
「んー、そうね。強いて言うなら……恋煩いってやつかね」
まるで他人事のように飄々とおどけてみせた。
こいつ、どんな反応をするんだろうか。何だか肝が据わってきて、ヤツの反応が楽しみになってくる。
「恋煩いだ? 誰に――?」
「さあな。内緒」
「好きなヤツでもできたわけ?」
「まあね。思いっきり片想いだけどな」
マジでこいつ、どんな反応を返してくっかな?
だんだん面白くなってきて、多少の上から目線でそう言った。だが、チラリと横目に見やったヤツの眉根が八の字に歪んでいるのに驚かされてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!