また男から間違えられた。

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「あの、妹の明日可(あすか)の友人ですよね?」 「はい?」 「妹の明日可(あすか)から、双子って聞いてますか?」 「え! 知りませんでした」  男性は絶句していた。申し訳なさそうに下を向く。  双子の妹、明日可(あすか)は都会の大学に進学した。わたしは地元の大学生だ。子供の頃から全然知らない人から、たびたび声をかけられた。  別々の高校に進んだ。明日可(あすか)の先輩みたいな人に、声をかけれれば、笑顔で軽く頭を下げていた。   「名前を教えてもらえませんか、明日可(あすか)に電話してみます」 「お姉さんとは知らず、ホントにすみませんでした。大室(おおむろ)。妹さんの明日可(あすか)さんと同じ、東都大(とうとだい)大室(おおむろ)です」  大室(おおむろ)さんは、頬を染めながら、頭をかいている。わたしは、後退りして、一定の距離を保つ。警戒心より、ムカつきが大きい。  ポケットからスマホを取り出して、明日可(あすか)に電話した。 「どうしたの?」  明日可(あすか)の、間延びした声が電話越しにした。橋の上で通行する方が通って行く。人目もあるので、声色を意識して柔らかくした。 「東都大の大室さんと、橋の上でお会いしたの」 「わわ、わたしのカレ。家に案内して」  オマエなー、こっちはタイムセールに向う途中で、忙しいんだよ。橋まで自分が来い! 言いかけた声は、喉でとめれた。  スマホの通話を切った。ポケットにスマホを滑らせながら、頬を緩ませる。 「大室さん、家までご案内します」 「ホントすみませんでした」 「いえ、悪いのは、双子って説明しなかった明日可(あすか)です」  くるりと、大室さんに背中を向けて、憮然としながら、家に戻る。後ろを大室さんがくっついてくるが、こんな早とちりの男、うっとうしい。  自宅の扉を開けて、大室さんに入るように促す。 「大室さん、散らかってますが、どうぞ」 「失礼します」 「航太(こうた)ー!」  明日可(あすか)サンダル履きで、玄関を下りてくる。慌ててブラッシングとしたのが分かった。頭上でくせ毛が、くるりとなっていた。 「大室さん、わたし、買い物があるので出かけます」 「行ってらっしゃい」  明日可(あすか)が手を振っている。帰省してのんびりし過ぎな、オマエが言うな。  深く頭を下げる大室さんには、笑顔で応じる。 「実家の家事手伝わない、バカな妹ですが、親切にして下さり、ありがとうございます」  ばーか、ばーか、明日可(あすか)のばーか、と胸の内で叫びながら、スーパーへ歩く。  タイムセールの商品棚に向えば、どれも空だ。まったく、明日可(あすか)のせいで、知らない男に抱きしめらた。しかも、タイムセールに間に合わなかった。  ふてくされながら、橋の上で立ち止まった。川が夕焼けを反射して、水面が美しく輝いている。  欄干に両肘を突きながら、空を見上げた。白っぽい月が光を帯びている。  わたしは、帰宅した。 ***
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