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明るい時間にスーパーへ急がないと。
午後4時からのタイムセールで、10個で50円(税抜き)の玉子を買うためだ。鏡の前で、メイクは5分で済ませた。部屋着のワンピースを着替えている時間はない。
足早に川に架かった橋を駆け抜ける。駐車場が満車で混雑してそうな、スーパーの看板が見えた。
ん? 前から男性が歩いて来る。服装はラフだが誠実そうな方だ。わたしを見た瞬間、目を見開きながら、走り出した。
また勘違いされそうな、嫌な予感がして、わたしは立ち止まる。説明しようとしたそのとき。
「明日可-!」
いきなり抱きしめられた。防衛本能で、手をグーにしたが、払いのけなかった。否、払いのけれなかった。
背筋が凍り、鳥肌が立つ。男性がゆっくりわたしから、腕を離した。
体全体に、知らない男性の匂いが染みつく。両手を膝に突き、肩で息をしている男性に、説明をする。
「わたし、今日可って言います」
「え?」
男性が上目遣いで目を瞬いている。やっぱり知らないんだ。
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