No.2 またな

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No.2 またな

あれから少しして、ニュースで『あの射殺事件には真犯人がいる』という報告が為された。あの残りの不良の出す証拠やらなんやらが見つかり、今は逃走中と見られる林圭吾、つまり俺を探しているわけだ。 「指名手配か……こんなところに写真が張り出されるなんて、悪くなったもんだな」 俺は、交番の前の掲示板に自分の手配書が貼ってあることを確認した。こうなる前に整形しても良かったが、それでは目的は達成しにくい。 今から自首する手段をとってもいいが、そんなことは出来ない。何故なら、逃走した時点でかなり罪が上乗せされているだろう。 死刑になるのは2人以上殺したらという話もあるが、俺が恐れておるのは死刑ではない。 ずっとここに居座っていても意味がないから、とりあえず移動することに決めた。 「……」 交番から移動して、着いたのはとある公園。自分の家や現場から結構離れ、ここなら人気も少ないし逃れるのに丁度いい。 ちなみに、俺は今、ホームレスのフリをしている。特になにも喋らず、そこら辺にあるゴミを食っているフリをしているのだ。実際は、隠れてしっかりとした食べ物を食っているが。 「おう兄ちゃん、いいもん食ってるじゃねぇか」 「!?」 隠れて飯を食っていると、後ろからひょこりとおっさんが顔を出してきた。このおっさんこそ、本物のホームレスのようだ。 流石に俺も驚いて、飯を隠す。ホームレスなのに、そんな物を持っているのはおかしいと嗅ぎ付けられたら困るからだ。 「なに隠してんだよ。そこら辺のコンビニ辺りから盗ってきた物じゃねーのか?」 「あ、ああ……、そうだよ……」 「お前、盗るのうめぇんだな!さては、しっかりとした服もってんだろ!俺なんて、店に入った時点で異様な目で見られっからな!」 おっさんは、続けてそう言う。そうか、盗むという行動をすっかり忘れていた。 ホームレスでしっかりと飯を食っている奴は、盗ってきた物を食っている奴に見えるのは当然だ。 「そうか、おっさんも色々と大変なんだろ?」 「そうだな。まあ、この生活にも慣れてきているから恐いぜ。酒に埋もれた楽しい生活とも言えるがな!カッカッカ!」 「ははは……」 「お前さんも、色々と大変なのかい?」 「いや、俺は別に……」 俺は、なんと返せばいいのかよく分からなかった。自分がしたことが駄目だったのだから、自業自得とも言えるが、はたして全てがそうなのだろうか。まず俺は、間違ったことをしているのだろうか。それさえ分からなくなってきていた。 「まあ人生は色々あるもんだ。ちょっと辛いことがあったって、道を曲げないことが大事だと思うぜ」 「人生を捨てかけたおっさんに言われたかねぇな」 「クク、笑えねぇ」 そんな風におっさんと話ながら、俺は飯を食い終えて、移動を始めようとする。 「なんだ、もう行っちまうのか?」 「まあな」 「まあ、頑張って生きろ。言っとくが、俺はいつもここにいるからな。じゃあ、またな」 「ああ……またな」 俺は、おっさんと別れる。そして、またあの時のような暗い路地に入る。今回は、不良はいない。 「本当にまたな……おっさん」 別れた後も、俺は最後に聞いた『生きろ』という言葉を忘れなかった。そして、『またな』という言葉も。 俺は、そんな言葉を口にして、その公園からもっと離れていくのであった。
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