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「はい、皆そこまで。テストまでもう時間無いからさ」
何も言えず黙っている私の前に由衣ちゃんが立って手を叩いた。
「えぇー!、気になるのに!」
冗談まじりの皆の笑い顔が私の記憶に残った。皆、悪気があって言ってる訳じゃないのは分かる。だけどあまりにも酷い。
「七海問題出しっこしよ?」
「うん...ありがとう」
由衣ちゃんは本当に優しい。
だから、甘えちゃう。
駄目だって分かってるけど、臆病で人見知りの私は自分じゃ何も出来ない。
「あ、私もやるやる!」
さっきまで私に質問をしてきた人達もそれぞれ教科書を取り出しては問題を出し始めた。
「七海、それこの公式を使うんだよ」
「あ、そっか」
皆で勉強してる時に不意に後ろから「おはよう」と聞こえて視線だけをそちらに向ける。
そのおはようが私に向けられたものじゃないと分かっているけれど。
(...佐々木君)
佐々木隼人君。同じクラスの男の子。
彼は優しくて、笑顔が素敵で、そして何より周りに居る友達が笑顔でいる。
彼と一緒に居るのが楽しそうで羨ましい。
(また話してみたいな)
そう思って彼の方へと向けていた視線を教科書へと戻す。
向こうは覚えてないかもしれないけど彼とは一度だけ話した事があった。
話したといってもほんの一言だったけど。
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