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『どうぞ』
佐々木君はそう言って私にプリントを手渡してくれる。
初めて会って、初めて会話した時佐々木君は
私を助けてくれた。
風で飛ばされてしまったプリントを拾いに行ってくれた、見知らぬ私の為に。
でも、私は上手く喋れなくて自分でも分からないくらいの小さな声で「ありがとう」としか言えなかった。
目を見るどころか顔すらも合わせずに。
駄目だって分かってるから、勇気を出して拾ってくれた人の顔を見ようと顔を上げたけど。そこに君はもう居なかった。
もっと、ちゃんとお礼を言いたかったのに。
あの日から、君を見つけては声をかけようって思うけど後一歩が出ない毎日を過ごしてきた。
佐々木君は私の事何も知らないかもしれないけど私は知ってるよ。
君の良い所沢山。
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