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「以上です」
ソファの真ん中に座らせられ、両側を園川先輩と子犬さんが座りました。
そして向かいに、食卓用のソファよりは少し高めの椅子を持ってきて副会長さんが座っています。
今はちょうど今回の騒動を最初から最後まで説明し終えたところです。
「奏夜悪くないじゃん」
「ん。悪くない」
「まるで私が悪いとでも言うかのようですね」
「そうじゃないけど...」
やっぱり、なんだかんだ園川先輩は俺に甘いですからね。
俺が何かで怒らせてしまっても怒りが長続きしなくてすぐに仲直りしてしまいます。
まあ、子犬さんは謎の尊敬の眼差しがありますし。
はぁ、と大きなため息が一つ、副会長さんの口から溢れます。
「奏夜が拐われた、と動転して私に電話してきたのはどこの誰でしたか?」
「うぐっ」
あ、園川先輩なんですね。
っていうか、こういう時に頼る相手は副会長さんなんだ。
2人は結構、口喧嘩をしていることが多いので連絡先とかも知らないと思っていたんですが。
頼ることのできる関係なんですね。
少し安心しました。
「すみません。俺がなんの連絡もせずにいたのが悪いんです」
「違うよ。奏夜は悪くない」
「悪くない」
「ありがとうございます。でも、俺に落ち度があったのは確かなので」
むぅ、と2人して不満そうな顔ですが、もう一度お礼を言いながらよしよしすると機嫌を直してくれました。
「そうですね。次からは何かしら連絡をして頂けると良いかと」
「はい。肝に銘じます」
「とりあえず、携帯電話は携帯しなければ意味がありませんので」
仰る通りです。
じゃあ、明日の予定も先に伝えておきましょう。
「あ、明日は友達と食事に行きます」
「相手は誰ですか?」
「クラスメイトです」
あ、俺もエースくんと同じことしてます。
でも俺は、先にちゃんと『友達』って言いましたし。
「名前は?」
「エースくんです」
「それは本名」
「じゃないです」
「ですよね。本名は?」
「えーっと、確か、小林くん?だった気が」
「ああ、スポーツ推薦の彼ですね」
え、名字だけで分かるんですか。すごい。
「それってあのいけすかないバスケ部?」
「いけすかないかどうかは分かりませんが、彼はバスケ部のエースですよ」
だからエースくんと呼んでいるのですね、と副会長さんに納得されました。
その通りですけど、そう言われるとなんて雑なあだ名なんだろうと自分で思います。
「もしかして、さっきの電話に出たのも」
「あー」
こういう時はどうしたらいいんでしょう。
正直に答えたら口出しされそうです。
だからといって嘘をついたらバレた時に大変なことになります。
「そうです」
「今からでも遅くないよやめな」
やっぱりそうなります?
「園川、友人関係にまで口出しするのは良くありませんよ」
「ん、ダメ」
副会長さんと子犬さんの両サイドからダメ出しを受けています。
園川先輩は、だって、と口を尖らせて不満そうです。
「あんなやつのどこがいいのか分かんない」
「んー頼り甲斐はありますよ」
「...」
あ、これは言葉のチョイス間違えたかな?
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