女にさえ生まれなければ

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 私はユキヤが今やっている仕事を知らない。聞けば教えてくれると思うけれど、あれこれ詮索するようなことはされるのもするのも苦手で、だから会話が弾むわけがない。  なんでこんな退屈な女になってしまったんだろう。  なんでこんな私をユキヤは相手してくれるんだろう。  危なっかしいとはよく言われる。放っておけないんだって。でも、それってなんか嬉しくはないよね。だって、私がまるでひとりで生きていけないぐらい小さくて弱い者と言われているのと、同じだから。  だから、好きだと言われても困る。それは勘違いだよって言いたくなる。  私なんか全くダメだよ。  自分でも、こんな女は願い下げだよ。  昨日、ユキヤの腕にしがみついてた女の子の方がまだマシだと思う。  周りを明るくするような笑顔を振りまけるだけで、尊敬する。  私は笑えない。  あんな風には、笑えない。  人には言えない悪いことをしてしまった私には、心から笑える日なんて永遠に来ない。  一瞬でもそのことを思い出すと、針で刺されるように身体中が痛んだ。  痛み止めをあらかじめ飲んだのに、痛みが増していく身体を布団の中で丸めた。階段を上って来る足音。鍵が開けられる音。部屋に流れ込むユキヤの気配。ユキヤのカーコロンの匂い。  まっしぐらに私のところに来たユキヤは、私の顔を覗き込んだ。 「顔色、真っ青だな。どうした?」 「…うん。生理痛」 「薬は?」 「もう飲んだ」 「飯は?」 「食べた」 「そっか…。湯たんぽだっけ。作ろうか?」  私は頷いた。  台所でお湯を沸かす音。人の気配がなによりホッとする。それがユキヤだから、猶更嬉しい。どうして帰って来なくなったのだろう。気になる。  ユキヤが作ってくれたホットミルクをふーふーしながら、座椅子に凭れてくつろいでいるユキヤに視線を送る。すぐに気付いた彼は、表情筋だけで「ん?」と聞いてくる。  その瞬間も、嬉しい。
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