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私はシートベルトを外して、ロックをあげて、ドアを開けて外に転がり出た。
怖い。
追いかけてくる、視線。
私を見る、汚らわしい欲望。
卑怯者が引きちぎった私の大事なものが、ただれていく。
血を滲ませて、痛いよと叫んでる。
どんなに時間が経っても、全然良くならない。
良くなるどころか、もっと悪くなっている気がする。
誰も信じられない。
みんなで私を傷付ける。
怖くて辛くて許せなくて、こんなに苦しいのに。
誰も助けられない。
助けてくれようともしない。
やめて。
触らないで。
こっちを見ないで。
放っておいて。
もう、やだ。
やだよ―――。
砂地に咲いた野生の薔薇に足を取られて転んだ。
棘で傷だらけの足からは、引っ掻いた傷がいくつも並ぶ。血が溢れ出す。
「ミユ!!」
ユキヤが追い付いてきて、私を後ろから抱きしめた。
思えばユキヤはとてもシャイだった記憶がある。初めて会ったときなんて、お母さんの後ろに隠れながら周りを見渡して、保育園に置き去りにされた悲しみを押し殺すようにむっつりとして、先生達を戸惑わせていた。
そんなユキヤがいつの間にか、クラスの人気者になってた。誰とでも仲良くなる彼を尊敬しつつ、どこかで嫌悪していた。
「ごめん!」
ユキヤの声が、荒野に響く。
町と町をつなぐ国道なのに、車通りは殆どない。
深夜なんだから、当たり前か…。
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