指輪

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指輪

たしかあれは秋から冬に移り変わる頃だったか、今日もクローバーが取れるシロツメクサの群生地に行こうとした。 そこには最早三つ葉すらなかった。 わずかな茎や根っこが残るばかり。 1日も経たない内に草刈機によってあっけなく、葉を散らされたのである。 当時の私にとってそれは、命が散らされたのと同意義のように思えた。 なんて残酷なんだろう、とも思ったわけだ。 たしかに昨日までは存在していたのだから。 私は落ちていたシロツメクサを拾い上げた。少し長い茎がついていたシロツメクサをぐるぐると巻いて、1つの指輪を作った。 その可憐な姿も3日後には消えてしまった。
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