梅雨生まれの僕と梅雨の妖精

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濡れたズボンのせいではないだろうが、その日の営業は失敗だった。 「また契約取れなかったのか。今月もお前、このままだと契約数最下位だぞ」 「はあ、えっと、すみません」 上司の言葉にいつも上手く返せない。 そのせいか、上司の叱責は日に日にひどくなっていた。 時には人格否定までされることもある。 「そうやって、うじうじしてるからだろ!」 うじうじ、または、じめじめは、僕を表す的確な言葉だ。学生時代から色んな人にそう評されてきた。 「梅雨生まれだから、そんなじめっとした性格なんじゃないの」 特に、夏生まれの姉はよくそう言う。 家族は僕以外夏生まれで、僕以外からりとした性格だ。生まれた季節で性格が決まるだなんてあり得ないのに、言われ続けていると、そうなのかもという気もしてくる。 というわけで、僕は自分の性格も、自分の生まれた季節も嫌いだ。自分を変えようとあえて選んだ営業の仕事も、どうやらやっぱり向いていない。
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