オレの誤算

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オレの誤算

朝、目覚めるとオレの部屋は何故か傘で一杯だった スニーカーも泥だらけだ 一晩中、無意識のうちに傘集めに奔走していたのか オレは夢遊病になってしまったんだろうか それになぜ、傘なんだ 傘なら自分でも何本も持っているし欲しい物でもなんでもない もしかしたらニュース沙汰になってやしないだろうか 急に不安になってテレビをつけた やっていない アパートの外におそるおそる出てみるとビニール傘があちこちに落ちている 慌てて落として来たんだろうか 道の向こうまで点々と傘が落ちている オレはどれだけ盗んできたんだ 昼になってテレビをつけた 限定した地域のコンビニの傘立てから集中して傘が盗まれている 防犯カメラにはオトコと思われる人物1名が写っていた と、報じていた ヤバイ オレはすでに防犯カメラで追われているのではないか いつ警察が来るかわからないという恐怖に襲われていく 部屋から出られない 自分から警察に行き 自分でもわからないうちにやってしまったと申し出ようか 病気かもしれないし 情状酌量の余地はあるはずだ だが、仕事、恋人、友達みんな無くすかも知れないと思うとなかなか踏み切れなかった 2時間くらいして部屋のドアがノックされた 警察か 窓のカーテンを少しずらして見てみると警察ではなかった ただの新聞の勧誘員だ ホッとする コンビニは街中で防犯カメラはあるだろうが一歩入ってしまえばどこにも付いていないほどのさびれた裏通りにアパートはあった 結局、その日は誰も来なかったがオレは警察がいつ来るかわからないという恐怖で苛まれていた ひと月もするとオレの真っ黒だった髪は真っ白になってしまった あまりの恐怖によるストレスだろう まだオレは20代半ばだぞ 友達からは病気じゃないかとか言われ恋人からは何となく距離を置かれているような気になっていた なんだょ! こんな事なら、早く警察に話してしまった方がよっぽど楽だった それから数日後、容疑者として、オンナが捕まったと警察から聞いた オンナ? じゃ、なぜオレの部屋に傘がある? そのオンナ、実はコンビニ店員だった オレは忘れていたがそのオンナからラインを教えてくださいと言われたことがあったが オレはつれなくダメと吐き捨てるように言って取り合わなかった それからその店員のオンナはオレの後をつけて自宅を確認したらしい そのときの恨みからその日は雨だったので傘を投げ入れてその犯人にしてやろうと思ったらしい 状況証拠としてスニーカーも外で汚しておいたようだ 裏のサッシが開いていたのでそこから入ったらしい そこまで恨まれているとは知らず自分の横柄な態度を反省した オレの彼女もあれから何やかんや理由をつけて会ってくれなくなっていた 別れか・・・ 犯人のオンナに嘆願書を書いてやろう 別に怪我したわけじゃないし、せめてもの気持ちだ 人間、何があるかわからない いつ、被害者、加害者になるかわからない世の中なんだな しばらく傘を見るのも嫌なオレだ さて、雨の日はどう過ごせばいいんだろうか
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