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司が顔の前でナイフを左右に振る。口元はうっすら笑っていた。
怖い。殺される。瑞香はそう直感し、逃げ道を探した。
しかし、後ろは既に壁だ。逃げるためには司を押し退けなければならない。
「小屋の中は入れないし開けられないよ。僕じゃなきゃ開けられないんだ。だって、鍵は僕が肌身離さず持っているから。それに、そうか、まだ生きてたんだ。それはびっくりだな、とうに死んでると思ったんだけど。そうか、新しい発見だね司」
自分自身に語りかけている司を目の前にし、瑞香の背筋に冷たい恐怖が這った。
顔つきが普通ではない。
「人を、殺したの?」
震える声を隠すように聞いた。
冗談だと信じたい。そんなことする人ではないと思いたい。小屋の中の人は間違えて入ってしまったんだと言ってほしかった。
「殺したつもりだよ」
まるでふつうに、なんの感情もなく答えた司の正体になぜもっと早く気がつかなかったんだろうとここに来て自分を責める。今までにだっていろいろおかしな面はあったじゃないか。
ナイフが光る。
己の肩が上下する。
身体が震える。
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