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「そうそう、その表情。最後に怒れば怒るほど身がしまるんだよ。身がしまるっていえばさ、瑞香が朝食べた野菜あったでしょ、もうよく育っていたけど、一回土から引っこ抜いて、その土の下にはね、小屋で見つけた女の両腿を養分として埋めたんだ。皮を剥ぎ、腐らないようにしてね。そしてそこに根を絡めてもう一回植えた。美味しかったでしょう。本当は膝から下を埋めたところに咲いているバラの花びらを紅茶に浮かべて飲ませてあげたかったのに。それが叶わなくて残念だよ。根に絡めて何日かおかないとちゃんと血肉を吸い上げたかわからないじゃない? その間のあのもどかしい時間が最高なんだよ」
「信じられない。それが本当なら狂ってる」
「でしょう。でも本当のことだよ。野菜だって美味しい美味しいって言って食べてたじゃない」
瑞香は朝食べた野菜を思い出して口元を両手でおさえた。
野菜の下にあるものを思い描けば描くほど口の中が酸っぱくなる。
とうとう我慢できなくなり両膝をつく。体が小刻みに震える。全身が寒くなる。力が入らない。嗚咽が漏れる。鼻の奥が痛い。
瑞香は堪えきれず、胃の中の内容物全てを吐き出した。
苦しみと気持ち悪さと恐怖に涙が落ちる。
こぼれ落ちる涙と止められない吐き気の向こう側で司が楽しそうに笑っている声が聞こえた。
何を言っているのかはわからないが、ああ、私はここで終わるんだ。ということが脳裏によぎったところで記憶がぷつりと途切れたのだった。
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