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「で、それ以来記憶は戻らなかったわけ? 殺される寸前のこととかさ、なんかないの?」
「はい。気づいたら土の上に正座して座ってました。ああ、この下に私の身体があるんだって直感で思ったっていうか。不思議と涙は出なかったんですけど、自分の男を見る目の無さと、こうなってしまったことへの絶望と怒りがぐるぐるにこんがらがって交わって、どうにかなりそうでした」
「ああ、それは大丈夫よ。死んだらどうにもならないんだから」
昭子が何気なく言ったことに瑞香は悲しげな顔をする。目をゆっくり閉じ、鼻から一つ大きく息を吐く。
どうやって殺されたんだろう。
瑞香は自分の最期を思い出そうと記憶を辿る。
その間も太郎に侍に昭子は持論をぶつけ合い、瑞香の死体の在り処を推測する。
「まあ、ここで話していても解決はしないし、そろそろ時間も来たようだし、行ってみるとしようぜい」
太郎が自分たちの話を切り上げ、思い出そうと必死な顔をしている瑞香の気を戻すようにパンと一つ柏手を打った。
瑞香の前に置かれている蝋燭の火がうつろになり始めた。
太郎がふうっと息を吹きかけて消す。
暗闇に巻き取られるように蝋燭の火がぐにゃりと曲がり、やがて四人の姿は影の内へと吸い込まれていった。
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