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最後には家の周りに埋めた沢山の死体を発見することになる。
一躍日本中のニュースになる。果たしてこの家族はどうやって生きていくのか。実の父親が殺人鬼だ。己の体の中にもこの殺人鬼の血が流れているとわかったらこどもたちはどうなるであろうか。
狂うか。嬉しがるか。俺を呪うか。恨むか。
そんなことを考えながら畑の方へ足を向けていると、ある場所に女がいることに気づく。
確かあの場所には……
「ああ、懐かしい。瑞香じゃないか。なんでお前がここにいる? もしかして俺を待ってたのか」
自分が過去にしたことは忘れたのか、親しげに優しくににこやかに瑞香に声をかけたのである。
目の前にいる瑞香は、元気が無いように見えた。
ぼうっと突っ立ているのだ。目を凝らしてようく見る。
「ほほう、これはまた。あの時のままの格好だとは。そうか、死ぬということはそういうことか。最後の格好で居続けるということなのか」
司は馬鹿にした笑いを一つ、今さっき感じた懐かしい気持ちはどこへやら、肩を上下に揺らして鼻の下をこすった。自分の格好を見てみた。いつもの寝間着だ。嘲笑う。
「あなたを、ここでずうっと待っておりました」
瑞香は下を向いたまま、小さい声で話し出した。
「あなたが死ぬのを、待っていました」
「そうだろう。待ってたんだなあ。あんなことされてまで待ってるなんて、」
「待って、ました」
抑揚のない声に司は違和感を感じ、辺りに注意深く神経をむける。
「でも一つ、思い出せないのです。あなたに、どうやって、殺されて、ここに、埋められたのか。どうして、なのか、そこの、記憶が、ないんです。それをさあ、教えてください。お互い、もう、死んで、しまったんですから」
瑞香はぽつぽつとことばを発し、まだ下を向いている。かすかに体が左右に揺れ始めた。
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