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「そんなずばっと言っちゃあ、身も蓋もねえってもんだわな」
侍が目尻に烏の足跡をこしらえて残りのメロンソーダを飲み干した。
着物の襟を首元まで上げてわざとらしく傷を隠す。
「そうよねえ、メロンソーダが好きな落ち武者なんて聞いたことないよねえ」
昭子が日本酒をくいっとやって侍にしてやったり顔を向ける。
「おい、昭子さん、聞き捨てならねえな、俺は落ち武者じゃねえぞ。それに言っとくがな、侍でもねえからな。俺は単なる放蕩息子だ。そこらへんの輩と一緒にしてもらっちゃあ困る」
「放蕩息子だって胸を張って言えることじゃないと思いますよ、侍さん」
太郎がやんわりと正論を述べる。そんな太郎の言葉に侍は背を向けて聞こえないふりをした。
「それじゃあ、侍さんがどうしてメロンソーダが好きな侍さんになったのか、死んだのになんで成仏しなかったのかを教えてください」
玉子がえんぴつの先をまた舐めて、書く体勢を整えた。
「言い方にしっくりこねえがここは一つ我慢しちゃるか。面倒くせえが、それがお前との約束の一つだしな。少しだけだったら教えてやってもいいぞ。というよりだな、ここに長く居すぎて昔のことは朧げなところもあんのよ。だから、そういうところは端折るからな。それでいいな」
たまこは大きく頷いた。
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