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「ほらまた始まった。侍はいっつもこれだよ。話はここから面白くなるってところで話を切る。尻切れ蜻蛉とはこのことさね。ああ、いやだいやだ。こういうしみったれた男は嫌いだね」
「肝心なところは言わないって一番嫌なタイプですよね。みんなから嫌われるやつですよ侍さん」
昭子と太郎が侍にもんくを言う。しかし、その顔は何やら知った顔で目をギラつかせながらたまこの様子をうかがっていた。
「それで終わりなの? 侍さん、その後お家がどうなったか本当に知らないの? 弟さんとは会ってないの? そもそもくすねたお金はどうしたの? どこへ行ったの? ふつう家族の人は探しに来るでしょう? なんでわかんなくなっちゃったの?」
「すげえ質問攻めにしてくるな。たくさんあるとわからなくなるだろうが。質問はどれか一つになんないかねえ」
侍がたまこに遠慮なく嫌な顔を向けつつも口元は笑っている。
ここから話が面白くなるのにその後のことは知らねえと白を切られたたまこは、前のめりに侍に近づき、話の先を聞きたいと訴える。
しかし、侍は「へへ」っと笑って誤魔化すだけでたまこの聞きたいことには答える気はない。
「でもさ、けっこうなお金をくすねたんだからお家の人が探さなかったらお巡りさんとかが探すでしょう? 侍さんの後を追って来たりしたでしょう? あ、わかった。結局見つかっちゃってたりして。で、しこたま怒られて大泣きしたとか。で、恥ずかしくていえないからいっつもここでしらきってる。でしょう?」
たまこが今の己にでき得る最大限のカマをかけてみる。
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