雨音

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雨が降る日はツいてない。 たくさんの人が私のテリトリーに入ってくるから。 私は見たい。 あの景色を独り占めしたい。 誰にも見せたくない。 先輩、いつもみたいに一人で静かにカウンターで本を読んでてください。 時々空を見上げて下さい。 その姿、とっても綺麗です。 美しいです。 今日みたいな雨の日の昼休みは人がいっぱい居る。 カッコいい先輩に話しかけてる。 先輩、いつもみたいに本を返させて下さい。 いつもみたいに本を借りさせて下さい。 借りますか、返しますか?って聞いてください。 返却期限は2週間後ですって教えて下さい。 先輩の声を聞かせて下さい。 その一瞬、合う目にドキッとさせて下さい。 柔らかく微笑む優しい顔を見せて下さい。 私の耳には先輩の声しか聞こえませんように。 先輩の耳にも私の声しか聞こえませんように。 私の眼には先輩だけが映りますように。 先輩の眼には私だけが映りますように。 放課後、また来ますね。 その時は、声を聞かせて下さい。
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