はじまり

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はじまり

あぁ、いつもこうやって終わる 何が悪いのか私にはわからない ただ一緒に居たいだけなのに メアリー「どうして私がこんな目に!」 暗い夜道を雨が強く音をたてる中 息を切らせて走り続けていた 冷たく冷たく体に打ちつける雨が辛くて雨宿りできる場所を探した そうなる前は村から出て幸せになれると思っていたのに‥‥どうして?酷いわ こころの中は大荒れで整理なんてできなくて まさか昔に別れたはずの人があんなことをするなんて考えていなかった 早めに出ていたら‥‥ まだ違っていたかもしれなかったのに 大切なあの人とは離れ離れになってしまった 彼の言う通り 振り返らずに来たけれど どうなってしまったかなんて考えたくもなかった メアリー「私が何をしたと言うの? ちゃんと関係性は終わっていたはずなのに どうか生きていて」 ただただ涙が溢れた それでも、あの場所には戻れない 後悔だけが私には残っていた これは誰への罰なのでしょうか? メアリー「それでも私は前に進まないといけないの‥あの人が願ってくれたから」 私は目の前には大きな屋敷 外は大雨、もう行く宛もない 屋敷を見て意を決してその扉を叩いた 程なくして重そうな扉が私の前で音を立てて開く あの人のような恐ろしい人だったらと恐怖から震えが微かにする モブ爺「おや、珍しいこともある このような夜更けにどうなさいましたかな? ただならぬ ご様子 もし宜しければ泊まっていきなされ」 出てきたのは老人で多少は恐怖が薄れていく 何も事情を話さずとも言いたいことを理解して貰えたこと、それが有り難いことだった 嫌なことを思い出さずにすむ メアリー「そのご厚意に甘えさせてください ありがとうございます」 私はいつも通り笑みを向けた 愛人達に向けるように綺麗なそれを モブ爺「部屋は空いておるから、何処でも使ってくれて構わんよ 寒さは体に悪い、早く寝ることをお勧めするかのう。 では失礼」 早々に一人になって私は空いていると言われた角部屋を見つけてその扉を開けた 入ってみればとても大きく綺麗な内装が見えた 私の家も似たようなものだったのにと不意に悲しみが押し寄せてきて涙が出そうになる 今となっては何も意味を成さない、分かっているのにどうしても過去にすがりたくなってしまう それは私の悪い癖だ きっと疲れている だから過去に目が眩むのね それなら休む 眠りで痛みを遠ざけてしまえばいい 部屋という安心感もあって自らの体がとても疲れていたのだと初めて自覚した どうしてもベットに体を横たえていなければ 目眩でどうにかなってしまいそうで メアリー「もう、休まなければ あぁ、悪い夢なら目覚めて 早く現実に戻りたいの」 私は静かに眠りに落ちていく ◆ ◆ ◆ ◆ ??「メアリー様 夜分遅くに申し訳ございません 貴方様にゲームのために必要な事をお聞きしに参りました 配役上 仕方がないことなのです」 すぐ近くから聞こえた声に一瞬のうちに微睡みから覚めて メアリー「‥‥誰!」 恐ろしさのあまり声は震え見るに耐えないくらいな声音で叫んでしまう GM「あぁ、驚かせてしまいましたか 申し訳ございません 私はGMと申します。落ち着いたようでしたら 説明をしたいのですが‥‥」 なにを? ゲーム、配役? 混乱した頭には分からないことばかりで 理解できることがない メアリー「一体、なにを?何を言いたいんですか?」 私の純粋な問いに質問者は少し考えるように間をあける GM「ふむ、口で言うより実際に見せた方が いいでしょうかね‥‥」 そう静かに話すと手をゆっくりと私の目の高さ まであげて話し始めた GM「では改めまして説明を 貴方様の役職は 悪女でございます 貴方様が心に決めた相手を 本命とし惹かれた方二人を手玉とします」 質問者の手の平で説明通りにくるくると即興劇のように三人の人間が踊る 一体どこから現れたの? 普通ならあり得ない光景に瞬きすら忘れて見続けてしまう メアリー「悪女‥‥本命と手玉」 未知なる言葉を反復しながら自然と頭の中にいれていく 私はやはり悪い女なのだろうか GM「その言葉通り本命とは命を懸けるほどのお相手だということをお忘れなきよう」 全てが夢物語のようで実感がわかない どういうことなの? メアリー「命を懸ける? ‥‥それは本当に私が死ぬということ?」 GM「勿論でございます 本命が死ねば貴方様の命も道連れとなります 本命とは‥運命共同体と評してもいいでしょう 手玉は死んでも貴方様は死ぬことはありません ですが、それを相手に悟られれば どうなるかについてはご承知の通りだと思いますが‥‥。ではお選びください」 GMから渡させた参加者のリストに目をおとす 我ながら可笑しいことだと思う 1日前には終わりまで約束した愛した人がいたはずなのに私は誰かを選ぶことができるのね あぁ、言葉にもしたくない パラパラとめくりながら大切にしたい人を探す めくっているうちに自然と私の手はある人を見て止まっていた メアリー「この人‥‥フェイっていうのね とても真面目で優しそうな人 ねぇ、GM‥‥お願い、この人がいいわ」 GM「貴方様が言うのであれば必ず叶うでしょう それこそが貴方様の能力なのですから」 その言葉に胸がきゅっと締め付けられる気がした 彼は私を愛してくれるんだろうか 心の奥底に不安が残っていた 心配はいらないわよね メアリー「そう‥そうね 私は彼を気にいってしまった 命を懸けてもいいくらいに」 GM「では、手玉‥のお二方はサンドラ様 エマ様でよろしいですね?」 言葉にしていないというのに見透かされて しまったことに驚いて一瞬、戸惑ってしまう 決心したと言っても慣れぬものがあった メアリー「はい、その通りです エマは私にはない可愛らしさを持っているし サンドラは美しい髪と綺麗な声を持っている 私にはない輝きを知っているから だからこそ私は選ぶ」 私の想いを聞いてGMは微かに頷く GM「貴方様の想い受理いたしました 今宵はもう、おやすみくださいませ」 私の返答を聞くことはなく そのままGMは元の闇のなかに消えていった メアリー「そうよね‥‥私はもう選んでしまった 悔やんでいられないわ」 ただ重くのしかかる真実に今にも胸が潰されてしまいそうだった 頭が痛い 今日はなにかと考えすぎたみたい もう眠らないと 重いまぶたを閉じて暗闇に身を任せた
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