嘘と言う名の日常

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嘘と言う名の日常

 やっと目が覚めたのは4月も中頃のことだった。 「ゆうくん!」  彼は、普通の朝が来たかのようにむくりと上体を起こした。  そして、辺りをゆっくりとみまわし、私のところで止まる。   彼はまじまじと私を観てこう呟いた。 「あなたは誰ですか?」 *  *  *  *  *  彼は記憶喪失になっていた。そっくりここ一年位の記憶がないみたい。  私は…… ある計画を実行した。  彼の両親、友達、学校にも協力してもらって。彼にはもう一度、私と一緒に一年生をやってもらうの。  彼と付き合い始めたのは11月。10月25日、彼の誕生日を祝った時、彼から告白をもらった。  だから…… 彼の誕生日を祝ったら私は彼の目の前から消える。   もう一つ、彼に嘘をつくことにした。 大学の入学式で出会ったにしては仲が良すぎるから、彼とは幼馴染で大学で再会したという設定にさせてもらった。  私の両親にも彼の両親に挨拶させて面識あるようにしたし。 死ぬ前に彼と人生楽しむんだ。 *  *  *  *  *  彼が目覚めてから、毎日お見舞いに行った。 寝たきりだったのでリハビリなんかもあって、手伝ったりしながらお互いのことを話した。 出会ったばかりの頃ように、探りながら話てくる彼の姿はなんだか懐かしい感じがした。 短いけど大学生活がちょっと楽しみに感じた。  そして、4月後半から大学へ復帰出来る事となった。 *  *  *  *  * 「ゆか……なんだかオレ達だけ取り残されてる気がする」  桜が散ってしまい。黄緑色の青葉をのぞかせる木々。 初登校の正門後のメイン通りで彼は、私に呟いた。 「大丈夫、私がエスコートしてあげる」 「そうか、ゆかは入学式から来てるのか……おれだけか……」   彼は、顎をしゃくらせ変顔を見せた。  思わず私は、笑った。 「何がおかしい」 彼はまだ変顔をしている。   なんて言うか、目覚めてからもリハビリだったりつらそうな日々だっから。   やっと平凡な生活と、マの抜けた彼が帰って気がして思わず吹き出してしまった。 「お帰り」 「そんなに経って無いよ。1ヶ月ぶりなんだから……あんま記憶がないけど」  しまったうっかり!  彼は入学式はいた事にしてあるんだっけ。発言には気をつけないといけないな。 「そうだよね!1ヶ月しか経ってないもんね!」 はっはっは~っと笑ってごまかす。  たしかに……一年目で最初の一か月間休んじゃうとか不安になるよね。 でも、大丈夫なんだちゃんと準備してあるから。 「授業の取り方とかどうすんだろう。説明聞くの面倒くせえ」 「大丈夫!」と 手をあげ自信満々に宣言する。 「私と全部、同じように提出しといた!」 「ええ……ありがたいけど、全部、同じってちょっと……」  う~ん、記憶喪失でも前と変わらないなあ。  出会った時も偶然みんなおんなじで、『……ちょっと……』とか言ってたっけ。 「ちょっと……何?恥ずかしい の?」 そんな時は、お仕置きするんだ。  彼は脇腹がとても弱い。 「それ!」と私は彼の脇腹をつつく。 彼は声にならない声をだし飛び上がった。 「ちょっと、それ本当にやめて~本当感謝してます。うれしいです!」 「よろしい!」  ああ、楽しい。 「ゆかはサークルはどうした?」  彼から聞かれたのは予想外だったけど、話そうとは思っていた。 記憶がなくなる前サークルも同じだったし、何より記憶をなくす前の友達もいるから同じサークルの方が都合もよかった。 「美味しい物めぐりサークル」  彼は目を丸くした。明らかに光を宿している。 そう彼と私は趣味が合う。 「美味しい物めぐりするの?」 「そうだよ!夏は北海道合宿だって」  彼は元気に手をあげた。 「入ります!」   楽しい時を過ごせそうでわくわくした。
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