僕の傘に入りなよ

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同じゼミ生のケイタは、成績が良いとは見受けられなかった。一浪だというから、学力だけを見れば、私の方が上だろう。しかし、社交的で先輩たちに可愛がられいて、背が高くてがっちりとした体格に穏やかな性格は、いかにも包容力があるという感じだった。 しかし、私は、包容力などというものを男性に求めてはいない筈だ。男は、社会という戦場で、戦っていかなければならないライバルだ。特殊な事情が揃った私にとっては、同性である女以上に。 外は雨だ。 ケイタの言葉にハッとした。私は泣いていた。無意識の計算かと、自分に寒気がする。 「ありがとう」。 ろくに顔も上げずに、その傘に入った。 どのくらい歩いただろう。外が雨だということをすっかり忘れていた。私はもう、外が雨だということに気付けなくなってしまうんじゃないかと、怖くもあった。
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