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翌日の夜、ネイサンの部屋には不安そうなスコルピオがいる。そこにノックの音と共に声がかかった。
「ネイサン、来ました!」
「開けていいよ」
声に応じて入ってきたのは、まったく同じ顔の二人の青年。癖のある黒髪が耳の後ろ辺りでひょこひょこ跳ねている。小ぶりな頭に少し大きめな猫目の青年達だ。
「イーデン、いらっしゃい。それと、フーエルも」
「はい!」
元気で嬉しそうなイーデンにがっちり腕を掴まれているフーエルは、スコルピオを見てビクリと足を止め、逃げようとしている。けれどイーデンはより力を込めてフーエルを引き止めている。
「痛い! 痛いっすイーデン!」
「いい加減逃げるのやめなよ、フーエル。お兄ちゃんでしょ?」
「こういう事にお兄ちゃんとか関係ないっす! それに双子なんだから、兄とか弟とか曖昧じゃないっすか!」
相変わらずちょっと特徴的な語尾のフーエルを、イーデンは構わず引っ張って部屋に鍵をかけ、スコルピオの前まで引っ張って行く。
最初はあんなに頼りなくて力も弱くてすぐに泣いていた子が、随分と逞しくなった。ネイサンは教育係としても嬉しくてホロリときた。
一方のフーエルは双子の弟イーデンに引っ張られて、スコルピオの前に突き出されていた。
「いい加減俺に愚痴ったり泣き言吐いてないで、ちゃんと言わなきゃ駄目だろ。俺、お前の恋人じゃないんだからな」
「それは……」
チラチラと目の前のスコルピオを見るフーエル。そんなフーエルを前にして、スコルピオもどう動いていいか分からないようでモジモジしている。
何この気持ち悪い感じ。そんなキャラじゃないでしょ、スコルピオ。
その間に恋人イーデンはネイサンの側に来て、焦れったい二人を見て目に冷気を宿した。
「あっ、なんか気持ち悪い。焦れったくてケツ蹴り倒したいです」
「あっ、君もそう思う? やっぱり君とは気が合うね」
こういう感覚がイーデンとはなんだか合う。だからこそ付き合い始めて一年と少し、わりと上手くやっている。
元はこの子の教育係。臆病で、痛い事が嫌いでしょっちゅう泣いていたイーデンが可愛くなっていた。まず、叩けば叩くほど大きな反応が返ってくるのが面白くて沢山泣かせた。
そのうちその泣き顔が可愛くなってきて、意地悪もしてしまって、それでも好きだと伝えたら「嘘だ!」を繰り返していた。
そしてスノーネルの一件で一度生死の境を彷徨って帰ってきたら、この子は目が溶けそうなくらい泣いてくれた。
そんなこんなで上手くいきはじめて、改めて告白したのが一年くらい前。了承を得てからは仕事とプライベートを完全遮断して、暗府にも秘密にして付き合っている。
「フーエルあれで喜んでるんですよ、スコルピオさん優しいって。なのに踏ん切りつかなくて逃げて帰って。根性なし」
「貞操の一つや二つ、そんなに大事にしなくてもいいのにね。男だし」
「俺、まだ枕は機会がないのでやってないですけれど、多分やれます」
「やって欲しくないから回してないんだよね。その尻に俺以外の野郎を許したら尻穴腫れるまで洗浄ね」
「……ツッコまれる前に自害しておきます」
「仇討ちは任せておいて」
「はい」
こんな、冗談とも本気とも分からない会話をするのは暗府くらいらしいが、この感覚に二人とも慣れている。そして洗浄の下りはわりと本気だったりする。
「そこ、不穏な事言うな!」
「イーデン酷いっす! 俺、まだ心の準備が」
「グチグチ言わないフーエル! 好きなんでしょ? 週二くらいでスコルピオさんの名前呼びながらこっそりオナニーしてるじゃん。あげなよ貞操」
「ぎゃぁぁ! 何で知ってるっすか!」
「同室なんだから当たり前じゃんか!」
どうにもこの双子は見ていて面白い。お兄ちゃん風を吹かせたいがヘタレのフーエルに、気が強くて奔放で泣き虫な弟イーデン。見た目は同じなのに中身がまったく違うのだ。
「まぁまぁ、今日はそんなフーエルがその気にならないかな? と思って呼んでみたんだから。喧嘩はやめようね」
フーエルとスコルピオに近づいていったネイサンはにっこりと笑い、イーデンの手を取って振り返らせるとそのまま深くキスをした。
「んっ!」
「ん……」
優しく唇を舐めて促して、開いた唇に舌を差し入れて甘く絡める。それだけでイーデンの黒い瞳が僅かに濡れて、甘い声が漏れてくる。
上の歯の根元、舌の根元を刺激して、時々舌を吸って。それだけでトロッとした顔をするイーデンはとても可愛い。
横目でチラリとフーエルの様子を見ると、驚いたり恥ずかしがったりしてアワアワしていた。耳まで真っ赤にして。
あぁ、可愛いな……
思っているとサッと横合いから腕が伸びて、フーエルを包み込む。こちらを睨んだスコルピオが同じように、フーエルの顎を捉えてキスをしていた。
こういう無駄な危機感で囲い込むなんて、弟も可愛い部分が残っている。
「ぷはぁ! ネイサン、するんですか?」
「しようか」
「でも……」
イーデンの視線がチラリとフーエルを見る。やはり気になるようだ。
勿論気にして貰わなければいけない。視姦、しかも双子の兄に見られながらするというのはこれまでにない興奮だろう。乱れる姿が楽しみでしかたがない。
「イーデン、セックスは怖くない。むしろ気持ちいい事なんだって、フーエルに教えてあげようか」
少しトロッとしているイーデンの耳元に悪魔の囁きを残す。それに、イーデンはにっこり笑って頷いて、あろう事かフーエルの腕を掴んでベッドへと誘導していく。
ネイサンは高身長で備え付けのベッドが小さくて足が出る。暗府副長を任された時に一人部屋となり、そのタイミングでベッドをクイーンまで大きくした。
だからカップル二組でも十分といえば十分なのだが……これはいいのだろうか?
流石に距離が近すぎて、ネイサンも少し気が引ける。チラリとスコルピオを見ると同じような顔をしていた。
だがイーデンは「お兄ちゃんに教えてあげる」という使命感にかられているのか、まったくもって気にしていない。ベッドに腰を下ろしたネイサンの膝に乗って、甘いキスをおねだりしてくる。
最初はこうじゃなかったんだけれどな……
まぁ、どっちも可愛くて愛しているからいいけれど。
「ネイサン」
甘え声で何度も角度を変えてキスをする。その合間にボタンを外し、滑らかな肌を撫でる。キスだけで感じ始めているのか、触っていないはずの乳首が僅かに硬くなっている。
押し込むように刺激すれば更に硬く尖り、コリコリと指に感じる様になった。
「気持ちいい、イーデン?」
「はい、気持ちいいです」
「じゃあ、見せてあげようね」
膝に座らせたままクルンとイーデンを回す。背中から抱え込む様にして後ろから手を回し、茹で蛸のようなフーエルに見せつけるようにして乳首を捏ねくり回した。
「あぁ! やっ、見られると恥ずかしいです」
「恥ずかしくしているんだから当然だよ。でも、気持ちいいでしょ?」
それを証拠に乳首の周辺も立ち上がっている。ピンッと弾くと艶っぽい声を上げて、イーデンはふるふると震えた。
彼の肩越しにフーエルを見ると、見てはいけないものを見ている顔をしている。でも、好奇心には勝てていない。それを証拠に興奮している。
「フーエル、イーデンが羨ましい?」
「ちっ、違うっす!」
「でも、勃ってきてるよね?」
ネイサンが指摘する通り、フーエルの股間は僅かに張りつめてきている。
スコルピオが後ろからフーエルを抱き込み、怯える背中に額を当てている。余裕のない表情の弟を見るのは初めてだ。それほどにこちらも我慢の限界なのか。
「フーエル、触りたい」
切ない声で訴えるスコルピオにビクッとしたフーエルは、俯いてしまった。考えているのかもしれない。戦っているのかもしれない。そして、このままではいられないと思っているのかもしれない。
「ネイサン、俺も構って」
ふと視線をイーデンに戻すと、ちょっと拗ねていた。笑って、可愛いと伝えて頬にキスをして、ネイサンはズボンの紐を外した。
イーデンの昂ぶりはすっかり張りつめてトロトロになっていた。握り込むと熱く、育って蜜を溢している。
「うっ……」
フーエルが思わず声を上げる。ちょっと引いたみたいだけれど、スコルピオが後ろから抱きついているから動けない。
悪魔がネイサンにまた囁く。この純粋な少年を色に染めろと。
「イーデン、自分でするかい?」
耳に囁きかけると、流石に躊躇いがあった。けれどイカない程度に扱いていくと徐々に快楽に勝てなくなっていく。ふるふる震えた所で、ネイサンは手を離した。
「あっ……」
与えられていた刺激が途切れて、切なくて悲しそうな吐息が漏れる。ネイサンの方を見たイーデンは訴えるようだ。だが、ネイサンは動かない。代わりににっこりと笑った。
「俺にも見せて欲しいな。イーデンが自分で可愛くする所。それに、フーエルにやり方教えるんでしょ?」
「でも……」
躊躇いと恥じらいに動けないイーデンだったが、やがて自分の昂ぶりを握り込んで上下に扱き始めた。
「イーデン!」
「兄さん、こうするんだよ?」
荒い息を吐きながら自分の昂ぶりを上下に扱きながら、もう片方の手で玉を揉む。この子はそこも気持ちがいいらしい。
「ネイサン、俺、上手?」
「上手でいやらしいよ、イーデン」
「うれ、しい……あっ、気持ちいい」
淫靡な音が室内に響き、熱い息づかいで満ちる。ネイサンの股座に座ったイーデンは言われるままに足を投げ出し大きく広げ後孔までフーエルに見えるようにして誘っている。
ネイサンは彼を支えながら後ろから手を回し、後孔を指で軽く掻き回した。
「はぁぁ! そこウズウズしますぅ」
「まだ前立腺にも達してないだろ?」
「入り口も感じるぅ」
「イヤらしい子だな」
緑色の瞳に涙を溜めてハフハフしながら自慰をし、後ろを犯されるのを兄に見せつけて感じている。多分頭の中はもう真っ白で、理性は飛ばしただろう。この子は流される。無駄な抵抗はあまりしない。
「フーエル……」
「スコルピオ、さん」
「……ごめん、触らせて。もう、俺は限界だよ」
見せつけられているスコルピオが一瞬、ネイサンを睨んだ。恨めしい視線にネイサンは笑みを見せる。こういうギラついた弟の顔を見ると、妙にゾクゾクする。
「俺じゃ、ダメなの? 怖くないように、丁寧にする。フーエルに触りたい。ちゃんと気持ちよくするよ。焦らしたりしないから」
さぁ、どうでる? 恋人の切ない訴えに応えるのか、それとも自分の恐怖心に勝てないのか。
ニヤリと笑うネイサンには、答えは見えていた。だってもう、フーエルも限界なんだ。
「……キス、して欲しいっす。あと、怖いの嫌っす」
ボソボソと伝える声をしっかりと聞いたスコルピオは直ぐさまフーエルの顎を引き寄せて深いキスをしている。そしてその間に服の下から手を差し入れて、モゾモゾと動き出した。
「ふっ、んぅぅっ……あぁ、乳首嫌っすぅ」
涙目で切ない訴えをするフーエルだが、嫌がっているようには見えない。スコルピオの股の間に座ったまま蕩け顔だ。プルプルと震えながら嫌だと言っても説得力はない。
「兄さん……気持ち良さそう……」
「本当だね」
「俺も、気持ちよくしてぇ」
「いいよ」
後孔から指を抜き去り、イーデンの手を上から包み込んでそのまま上下に扱く。先端をクリクリと捏ねられるのが好きなのは知っている。乳首も一緒に捏ねくり回して。
「あっ、あっ、あぁ! ネイサン、俺イキそう!」
「いいよ、イーデン。ちゃんと見てもらいなさい」
カリ首に引っかけてしっかりと全体を刺激しながら、ネイサンはフーエルを見た。イーデンから目が離せない、この子と同じ顔の青年。
それを意識したまま、ネイサンは先端を指先で穿り、乳首を強く摘まみ上げ、項を噛んだ。
「んあぁぁ! あぁぁぁ!」
ビンッと背を仰け反らせながら盛大に白濁を吹き上げたイーデンを、フーエルは呆然と見ている。
そしてイーデンはぐったりとネイサンの胸の上に落ちてきた。
「気持ちよかったかい、イーデン」
「はい……気持ちいぃですぅ」
完全に出来上がった顔の可愛い事。大きな猫目が潤んで、頬は色付いて、甘えた表情と声で見上げてくる。
「それはよかった。それじゃ、本番をしようか」
さて、これからが楽しみだ。イーデンも、フーエルも。
腕の中と目の前と。羽化を待つさなぎが羽根を広げるのは、もうすぐそこなのだ。
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