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尊は傷口を見て悲しそうに顔をゆがめてから、慎重に新しい絆創膏を貼ってくれた。「オレのせいでごめん」と。
大したことねぇよ。それより、尊がケガしなくて良かった。もしも大やけどとか、深く切ってしまったら。尊は病院には連れていけない、医者を呼ぶこともできない。
心底、ホッとしている。尊が包丁で指を切ってしまったらと思うと、心臓が痛い。
「上手いじゃん。ありがとな。さて。じゃあ……そろそろ寝るか。一緒に」
尊が手を離すと、絆創膏はシワひとつなくピッタリ巻かれている。きつくも緩くもない。褒めてやれば嬉しそうに笑顔の花が咲く。
リビングから尊の部屋に向かい、2つ並べた布団に腰を下ろす。
「並べてはみたけどさ、1つでもギリギリ足りるな。よいしょっ、と。あんた寝相悪いからなぁ。俺を蹴り出すんじゃねぇぞ?」
「蹴らない!逆に三日月こそ、オレを押し出したりしないでよ?」
俺の布団を片付けて、尊の布団に一緒に横になる。尊の布団に俺の枕を並べて、けれど枕の存在を無視して尊の腰を抱き寄せた。
向き合うように抱きしめて、そのまま「おやすみ」と目を閉じると「……おやすみ」が返ってきた。
んー、素直だな?マジで寝るのか?俺はてっきり、今夜もヤりたいってゴネると思ってあえてイジワルをしているんだが。
今日から恋人。色々と順番はおかしいが、今夜がいわゆる初夜だろう?
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