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ピンポーン。予定より1時間ちょい遅れて、例のブツが宅配便のお兄さんの手によって運ばれてきた。
晩飯を食ってる途中だったので、ダンボール箱を手にリビングに戻るなり飛びついてきた尊を華麗に避けて「待て」と人差し指を向ける。
犬か。また飛びかかろうと両手を上げて身構えたまま、ピタッと止まった尊。その隙にダンボール箱をソファーに置く。
忠実に止まったままの尊犬に「おすわり」と、椅子を指さす。トボトボと椅子に座って、俺も自分の椅子に座ると途中だった晩飯をまた食べ始める。
「晩飯食って、片付けも全部終わってからのお楽しみにしとけ」
「箱を開けるくらいいいじゃん、ケチ。結構高かったんでしょ、いくらくらい?」
「え?」
「いや、オモチャの総額。本来なら買う必要なかったのに、オレが言い出したから気になって。いくらくらいかかったのかなぁって」
「え?」
「ん、聞こえなかった?無理言って頼んだオモチャ、いくらくらい――」
「え?」
「………………ごめんなさい」
あのオモチャがいくらかだって?この国で1番価値のある札が3枚くらいいなくなったぞ。ちゃんと聞こえてたって。答える気がねぇだけだ。
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