6日目(後編)

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「んんっ、んっ、あ、あっ……待って……待って、三日月、止まって!はぁっ、はぁっ、ん、はぁ……。はぁ。本当の気持ち、言ってくれてありがとう」  尊のナカを穿つ、快楽を与え自分も快楽を貪っていたら。突然ギュウッ!とナカを締め付けられた。思わず「ぐあっ!」なんて悲鳴。  両手で頭をつかまれ、合わされる視線。お互いの熱い息がかかる。尊は、真剣に俺を見つめていた。  柔らかく微笑んで、そして、その笑顔はクシャッと歪んだ。 「オレだって消えたくないよ!!前世の記憶を持ったまま生まれ変わって、しかも三日月に会って一緒に暮らせた。恋人になって心をつなげることをできた。それら全部が特別だってわかってる。でも……それでも、たった1週間で終わりだなんて、嫌に決まってる!」  それは悲痛な叫び。あぁ、尊は俺以上に寂しいんだ。そりゃあそうだ。消えるのは、生きることができなくなるのは尊なんだから。  ドンッ!俺の胸を、硬く握りしめた拳が叩く。ドンッ!「なんで、どうして!」と俺の心を叩く。 「すごく幸せなんだ。セミだった時と人間としての人生で1番の幸せ。でも、嫌だって言っても、どんなに暴れても結末は変えられない。オレは明日、消える」 「尊、俺も幸せだ。正直、彼女といた時よりも幸せ。俺、尊じゃないと――」 「嬉しいな。でもさ、俺は消えちゃうけど三日月はこれからも生きていく。だから、約束してほしいんだ。これから先、何十年先、死ぬまでオレのことは忘れないで。でも、生きて、幸せになって」  目を伏せて両腕を伸ばすと、俺の首を抱き寄せて耳元でささやいた。 「必ずまた、会いに来る。今度はもっと時間がかかるかもしれない。記憶もないと思う。でも絶対に、三日月を探し出してみせる。だから、その時はよろしく!」
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