7日目(前編)

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「……なら、朝飯と昼飯を一緒にしないとな。夜は少し出かけるし、昼は何か食いたいものはあるか?」 「パンケーキ!って、三日月、夜にどっか行くのか?オレ、消えるのに?」 「パンケーキは昼飯ってより朝飯だなぁ。ま、いっか、簡単だし。わかってるよ、すぐに戻ってくるから。出られない尊のためなんだぞ?」  残りの時間、少しでも長く俺と触れ合っていたい。わずかにでも離れていたくない。ひしひしと伝わってくる、尊の想い。  俺は再び横になって尊の頭と背中を撫でながら笑う。少し前、なぜか俺の中でパンケーキブームが起こって。3か月くらい毎朝がパンケーキだった。  業務用の粉、まだ残っていたよな?なんて考えながら、今日の夜のことを話す。 「今夜は夏祭りがあるんだ。家から少し離れたところにたくさんの屋台が出て、盆踊りを踊る人達がいて、最後には打ち上げ花火。早めに行って、屋台の食いもん買ってきてやるから、晩飯はそれ」 「打ち上げ花火!?なら、2階のベランダから見れるんじゃないっ?」 「いや、残念なことにベランダとは真逆なんだ。けど多少は見えるぞ。見えない代わりに、もっと楽しいのを考えてあるから楽しみにしてろ?」 「屋台の食べ物より、打ち上げ花火より楽しい?うん、楽しみにしてる!じゃあ、そのお楽しみまで消えないように頑張らないとねっ」  家族を失ってから、友達に誘われても夏祭りなんて行かなかったし意識もしなかったのに。  今はこんなにも楽しみだ。尊と一緒に行けないのは残念だが、食いきれないってくらいいっぱい買ってやろう。食い物以外も、尊に少しでも夏祭りを味わってもらえるように。
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