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というかいやいや、よくないだろ?モヤモヤするし、あんたは一体誰なんだよ?俺に何の用があって――
「うぅ、気持ちわる……っ」
だめだ。色々問いただしてやろうと思ったのに、先に体の限界がきた。太陽は真上、熱風が吹き靴底が溶けそうなほど地面が熱いのに長時間外にいたら、そりゃあ倒れる。
日射病と熱中症のダブルパンチ。俺は、登場から今までずっと意味不明な赤の他人の男の前で気を失った。
「えぇっ!?うわ、体が熱い。こんなに水分も出て、この暑さに耐えられないなんて。人間の体は大変なんだね。オレも気をつけよう。大丈夫、すぐに涼しいところに連れて行ってあげるからっ」
目を閉じればそんな声が聞こえて、体中の力が抜ける。遠のく意識の中、俺は男の背中に乗せられたらしく胸から腹が暑い。
なんか、途中で妙な言葉が聞こえたような気がするんだが。もう、何て言ってたのかも思い出せない。
どこに行く気だ?ずっと、俺の家の前でしゃべっていたのに。男は、どんどん家から離れて行く。
あぁもう、どうでもいい。こいつが何者だろうと、俺を助けてくれようとしているのか悪いことをしようとしているのかとか、全部どうでもいい。
やりたいことも、生きる理由もわからないんだ。どうなってしまっても、「あぁそうか」って受け入れる。
男が何か、しきりに俺に話しかけているみたいだが聞こえない。最後に感じたのは、どこか懐かしい、木の匂いだった。
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