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どこか寂しそうな、愁いを帯びた表情。特に追及することなく俺も目を閉じるが、尊は今何を考えているんだ?わからない。
俺の中で、今後尊とどう暮らしていくのか?尊への俺の想いも、はっきりした。
明日の朝、俺は想いを伝える。それから、仕事を探す。真面目に、前向きに。これからもずっと、この安賀里三日月が好きで好きでたまらない世良尊と一緒に暮らしていくために。
世良尊と出会って3日。
突然、助けてもらった恩返しがしたいとやってきて。しかも前世はセミで、人間に生まれ変わった今でも心の変動でセミに戻ってしまう。そのうえ、生活範囲が超狭い。
まったくもって有り得ない。出会い、尊の存在。
尊は俺のことが恋愛の方で好きで、現実に絶望しきっていた俺は尊をレイプして。風邪をひいて。落ち着いたが尊のセミの羽根は消えない。
そして、俺が自分と、それから尊と向き合うために抱いた。思うがままに抱いて、答えを出した。
全てが夢なのかもしれない。眠って、殺人級の蒸し暑さに目が覚めたら尊はいない。長く不思議な夢だったと、俺はまたどうやって死のうか悩むんだ。
けれどこれは全て現実。深く息を吸いこむと、ほんのりあの大樹の匂いがする。落ち着く匂い。
俺は、実は目を閉じただけで早く眠れるよう羊の数を数えている尊の頬を軽く撫でた。小さく「おやすみ」の言葉を紡ぎ、目を閉じる。
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