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これが、俺が決めた答え。俺は尊のことが好きなんだと受け入れ、愛する恋人としてこれから一緒に生きていく。
幸せか?もっと幸せを感じたら、背中の大きなセミの羽根が消えてくれるか?尊、仰向けで寝たいだろ?それに正常位でセックスもできねぇしな?
早く消えてくれないものかと、尊の背中に回した手で軽く羽根をつかんでみたら。
「ハッピーエンド、か。嬉しいよ。嬉しくて、幸せ過ぎて、死んじゃいそうなくらい。でもきっと、ハッピーエンドにはならない」
そんな、くぐもった声が聞こえた。嬉しそうに笑っているのに、トーンの落ちた暗い声。
何でそんなことを言うんだよ?これでもまだ、あんたは幸せじゃねぇって言うのかよ?これから不幸になるって言うのかよ?
生活範囲がとんでもなく狭いのが最大の難点だが、俺達なりに幸せに生きていこう。俺は仕事、尊は専業主夫として家事を担って。
旅行したくなったら、その地域の特集番組を見たり。有名な産物をお取り寄せして、行った気になったりして。
休日は家でひたすらゴロゴロしたり。家事を一緒にして、料理とか尊が失敗したら思いっきり笑ってやろうとか。色々考えたのに。
問い詰めてやろうとして、気付いた。尊は、落ち着いている。落ち着いて、口を開いた。
「オレが人間に生まれ変わって、三日月と再会して今日で4日目。あと3日で、オレは………………消滅する」
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