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「黙っててごめん」
「謝るな。あと3日しかない?違う、あと3日もあるんだ。朝食を食ったら、一緒に掃除するぞ。掃除機かけるのと、窓を拭くのとか家具のホコリを拭くのとか。終わったら、風呂掃除」
「怒らないんだ?って、なにそれ、家事を教えてくれるんだ?嬉しいけど、せっかく恋人になったのに残りの時間をイチャイチャしようとは言わないんだなぁ」
「ずっとイチャついていたら、誰が掃除をしてくれる?誰が飯を作ってくれる?誰が洗濯をしてくれる?ほら、言ってみろよ?」
「……ごめんなさい。わかった!早く家事を終わらせて、残った時間でイチャイチャすればいいんだ!」
こいつ、ポジティブだ。というか、エロセミだ。こいつの頭の中、俺とイチャつくことしかねぇのか?
俺もつられて笑って、落ち込んでいた心も体も軽くなった。色々、非現実的なことばっかり起こり過ぎて慣れたっていうか、受け入れやすくなった。
いいじゃねぇか。5年前に助けたセミの生まれ変わりの世良尊の存在は、俺しか知らないままで終わる。
俺の、俺だけの世良尊。この1週間は俺達だけの秘密。
精一杯生きてやろうぜ。尊が消えて神様の元へ戻って、神様が拍手したくなるくらい色んなことを経験してさ。1分1秒も無駄にしないくらいに。人間の世界で全力で生きるんだ。
「さて、そうと決まればまずは朝食だ。いつもトーストだが、イイモン食わせてやる。俺の得意料理、フワッフワのパンケーキだ」
俺、家にいる時間が多くていつも自炊してんだ。あれこれチャレンジして、女子に人気のパンケーキにも手を出して極めた。
バナナを加えて焼いてチョコがけにしよう、とか考えながらベッドから降りる。すると尊が「待って」俺の手をつかんだ。
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