124人が本棚に入れています
本棚に追加
「乾杯ー!」
私の掛け声で、その場にいる全員が手に持ったグラス同士をぶつける。
ついに待ちに待っていた飲み会が始まった。
今日はこの春に入社した新入社員の歓迎会が開かれていた。
ここしばらくは、立ち上がったばかりの新しいプロジェクトのお陰で、寝る暇もないほどの忙しさだった。
気付けばもう六月になっていて、詰め込まれたスケジュールにようやく空きが出来た頃だった。
冷えたグラスに並々と注がれた橙色の液体。
それを半分くらいまで胃に流し込めば、久々のアルコールに心も体も喜んでるのを感じる。
一杯目はカシスオレンジと決めているから、例に倣って今日もそれにした。
これがビールなら少しは様になるのかも知れないけれど、苦手なものは仕方がない。
「ぷはー、生き返ったぁ」
(どこのおっさんだよ、私は。こんなだから彼氏が出来ないんじゃないの?)
頭のどこかから聞こえたツッコミには、両手を耳に当てて聞こえないフリをした。
だってせっかくの飲み会だ。
楽しまなきゃもったいない。
それに今は恋人なんて募集してないんだからね。
出来ないんじゃない。必要としてないんだから。
ここ大事よ。
それにしても仕事の後のお酒って、どうしてこんなに美味しいんだろう。不思議。
一週間と言わず、一ヶ月くらいの疲れが一気に吹き飛んだような気がする。
たった一口飲んだだけなのにそう思えるなんて、自分の単純な性格には我ながら呆れてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!