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「もう、坂井さん。うちのマネージャーはシャイでヘタレさんなんだから、あんまり困らせちゃダメよ?」
私の隣に座る咲良ちゃんが悪戯を思い付いたような笑みを浮かべている。
……何だか嫌な予感。
「え、そうなんですか?全然そうは見えませんけど」
まずい、食いついた。
莉那ちゃんは身を乗り出して、私と咲良ちゃんを交互に見た。
「仲原がヘタレ?そんなの、分かりきった事じゃないの」
「ちょっ、部長まで…。咲良ちゃん、余計な事言わないで」
また何かおかしな事を言い出す前に、と彼女を睨んだけれど、そんな事でへこたれるタイプじゃなかった。
「はーい。宏実さん、お顔が鬼みたいになってますよ?コワーイ」
案の定、彼女は両手の人差し指を角に見立てて頭の横から生やし、眉間に皺を寄せながら『鬼』を再現してくれた。
白目を剥くというおまけ付きで。
その場が一瞬で笑いに包まれる。
咲良ちゃんは自分の顔マネにすらも、自分でウケて爆笑していた。
こんなお調子者で人懐っこい性格のこの子に、私は毎回絆されて許してしまうのだ。
「はいはい。鬼で結構ですぅ」
「ぶふっ!先輩!顔、顔!!」
言いながら私も渾身の変顔で応戦すると、莉那ちゃんが吹き出し、緋山部長に至っては腹を抱えて顔が赤くなるほど笑い転げている。
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