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午前中の授業を終わらせ、お昼を食べる為、鞄の中からお弁当を取り出す。お弁当は毎朝自分で作っている。学食もあるのだが、男子が圧倒的に多く、女子は少なかったし、文乃の属している仲良しグループは皆、パンだとかお弁当を家から持ってきている。文乃は二段になっているお弁当箱を机の上で開けた。
「文乃ー。今日もお弁当美味しそうだね」
同級生の梨花ちゃんだ。梨花ちゃんはバスケットボール部に所属しているスポーツ女子である。ワサワサと文乃の前に腰かけるとバッグの中から菓子パンを取り出した。
「そう?私もパンでもいいんだけど、太るのが怖くて」
「文乃は全然太ってないじゃない。か弱い乙女って感じ。色白で細くって羨ましいな」
「そんな事ないよー。そうそう。私スポーツジムに行こうと思っているの」
「ジム?文乃アルバイトしてるでしょ。それにジムって大変そうだね」
「うん。でも夏になる前に少し鍛えようかなって思ったの」
文乃は月美さんの筋肉がついた腕を思い出した。
「私も行きたいな。何処のジムに行くの?」
梨花ちゃんが身を乗り出して聞いてきた。
梨花ちゃんもジムへ?
どうしよう。月美さんとの仲がバレるのは構わないが、梨花ちゃんは文乃の母とも仲が良いので、言ってしまわないか心配だ。反対されて、アルバイトも辞めさせられてしまうに違いない。
「まだ分からないよ。行けたらいいなって思ってる」
文乃は適当に誤魔化した。
今日はアルバイトが無い日なので、文乃は友達と3人、アイスクリーム屋さんに寄ってからゆっくりと家に帰った。家はマンションで文乃の部屋は玄関を入って左側にある。3つ上の兄の部屋はその隣だ。もっともあまり喋る機会は無いが。
ピンポン。
部屋に入って直ぐにスマートフォンがラインが来たことを告げる。見てみると今日IDを教えた星川君からだ。
『藤田さん、星川義人です。ID有難う。早速ラインしてみました。迷惑じゃなかったかな』
文乃は返信を打った。
『星川君、迷惑じゃないよ。でも週に4日はアルバイトをしているから直ぐには返信出来ないと思う』
『うん。今井に聞いたよ。ジュエリーショップだって?』
『そうだよ。1年生の時から働いているの。今度遊びにおいでよ』
『行っていいの?嬉しいな』
そうメッセージがあった後、有難うと吹き出しのついた猫のスタンプが来た。文乃は星川君の人懐っこい笑顔を思い出す。それと同時に何だか悪い事をしているような気分になった。付き合っている人がいる事を言った方が良いのだろうか。
でも突然付き合っている人がいるって言いだしずらい。
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