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アルバイトが終わり、裏にある狭い事務所の様な一室で帰り支度をしていると月美さんも隣で着替え始めた。筋肉のついた腕が魅力的である。
「文乃ちゃん、ピアス外すの手伝ってくれる?」
月美さんが髪をかき上げて、耳たぶの裏を見せる。フワッと良い香りがした。
「無理、無理ー。私、ピアス外すのって怖くって」
文乃は臆してそう言うが、月野さんはふふふと笑う。
「そんな事言ってたらお店で働けないよ。練習だと思って外してみて」
文乃はドキドキしながら、金具を摘まんで引っ張る。ピアスは案外簡単に耳から外れた。それを掌に載せ月美さんに渡す。
「有難う。文乃ちゃん」
月美さんの手が肩に置かれ、文乃を引き寄せる。文乃は自然と目を閉じた。熱くて柔らかい唇が文乃の唇に重なった。
抱きしめて欲しい。
そう思うがそこから先に進展はない。でも3ヶ月前に告白を文乃の方からしたら、月美さんは直ぐにOKしてくれた。
「そう。いいよ。付き合おう。私も文乃ちゃんの事好きだったんだよね」
そう言ってくれた言葉が嬉しくて今でも頭の中で反復する。
一緒にジムに行けたらいいな。
まだ、月美さんと付き合っている事は誰も知らない。学校の友達は月美さんの存在を知らなかったし、職場では公に出来ない。ジムで皆の公認の仲になりたいと思う。文乃は胸が熱くなるのを感じた。
アルバイトからの帰り道、月美さんの乗る電車は文乃とは違う路線なので、駅の中で別れる事になる。文乃は後ろ髪をひかれる思いで手を振って別れた。
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