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次の日学校へ行くと、同じクラスの男の子、今井君が教室の隅に文乃の腕を引っ張って呼んだ。
「痛たたた。一体なあに?」
「藤田さん、星川がライン交換したいんだって、ID教えて欲しいなと思ってさ」
「星川君が?自分で言いにくればいいのに」
「照れ臭いんだろう」
文乃は辟易した。こういう高校生独特の青臭い恋愛は興味がない。
「一応教えるけれど、私、アルバイトも忙しいし、頻繁に連絡とれないよ」
「そう、藤田さんアルバイトやってるって言ってたよね。何処なの?」
「新宿、そこにある小さなジュエリーショップだよ」
「藤田さん、お洒落だもんなー。僕達には無縁の世界だよ」
「そう?結構男の子も来るよ」
「ほんと?行ってみようかな。場所も教えてよ」
「うん」
そう言ってから、文乃は自分のラインのIDと店の場所をメモ帳に書いて紙を契ると、今井君に渡した。
「有難う。星川が喜ぶよ」
手をヒラヒラと振りながら、今井君は去っていった。
今井君は普通に去っていったが、思い返すとさっきの言い方、何だか意味深だった気がする。文乃は少し訝しく思った。また男の子から告白されるのかな。そう考えると気が重い。高校に入ってから、3人の男子に告白されているのだ。いずれも勉強が忙しいのを理由に断ったが、今回は彼女がいる事を言ってしまおうか。文乃はそう考えると、鞄の中からスマートフォンを取り出して、その中に入っているアルバムを開いてみた。中には月美さんと撮った写真が沢山保存してある。仲良さそうに顔をくっつけ合って写しいている写真、これを見せて彼女だって言ってみたい。
文乃は始業のチャイムが鳴るまで写真を見ていた。
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