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誤解
「どこの侍女だ?」
向けられた言葉に、初音は固まった。
(侍女、って……)
いくら小袖姿とはいえ、まさか侍女と間違えられるなんて。
初音の沈黙をどうとらえたか、章継は再度口を開く。
「違ったか? それは悪いことをした。女官の方だったか」
侍女から女官に格上げしてくれるが、そういう問題ではないのだ。
状況はますます悪くなった。
今ここで正体を明かせば、お互い気まずい思いをするしかない。
かと言って、偽ってどうなる。初音にもそれくらいの分別はあった。
「いえ、私は……」
かえりみられぬあなたの妻です。
頭の中に浮かんでも、それを口にする勇気はなかった。
「安心しろ。今夜のことを告げ口するつもりはない」
「……そういうことを気にしているのではありません」
「なら何が問題なんだ」
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