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(――コーヒー1杯分なんて、気にするほどのことじゃないかな)
とは思いつつ。
さっきのカフェでも、せっかくのお店のコーヒーだけど、デカフェを選んだ。
久々にソファ席で優雅な時間を、という目論見も、帰宅後のやることリストや睡眠時間が頭に浮かぶと、はかなく消え去って。
そういえば、お店ですれ違った女の人、かっこよかったな。モデル体型にウェッジソールのサンダル。すっきりした顔立ちと、しなやかな長い髪。
服装は休日モードなのに、ノートパソコンが入ってるっぽい大きなバッグで、お店の人たちと仲良さそうに話してた。
持ち帰った仕事を、行きつけのカフェで片づけるのかな? ああいうの、できないんだよねえ私。人がいると、気が散っちゃって。
でも、もしも今の年までひとり暮らしだったら。たまにはあんなおしゃれな休日も、あったかなあ。
(――いや、ないでしょ)
ふわふわ現実逃避しかけた自分に、自ら突っ込みをいれた。
ちょっとまとまった休みがとれたら即、スニーカーに極限まで減らした荷物で海外に飛び出す。そんなやつだったじゃん、結婚前の私。
だいたい、顔も身長も、カフェのあの彼女とは別ジャンルだし。カフェごはんもいいけど、基本はアジアの屋台メシでしょ。
うんうんと、ひとりうなずいた。
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