Ⅲ 甘いお別れ

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「じゃあここで、ふたりにお知らせー。 あのねえ。 もうすぐヒナ、お姉ちゃんになるみたいだよ?」 「――ええっ?!」  目の前で見開かれた、2セットのそっくりの瞳。  ふふ、いつ見てもおもしろい。  これから、8か月間ほどの妊婦生活。プラス、1年あまりの授乳生活。  計2年ほどの間、バイバイだね、コーヒー(もちろん、デカフェ商品のチェックは怠らないけど)。  そもそも、家族でゆっくりコーヒータイムだなんて、次はいったい何年後になることやら。ヒナだって、食事中落ち着いて座ってられるようになったのは、ここ数年のことだもんねえ。  ヒナを抱いていた腕に、驚きでつい力が入ったらしい夫に、 「つぶれるー」  けらけら笑うヒナ。  もうちょっとしたら、お腹の赤ちゃんにも聞こえるよ、その声。  ――決して、完璧ってわけじゃないけど。  お互い、ちょっとは注文もあるけど。  でもこれは絶対。私の、最高で最愛の家族たち。  お腹の中の、まだ顔も知らないかわいい新入りごと、3人まとめてむぎゅっと抱き締めたら、 「――嬉しいよ。おめでとう。ありがとう」  鼻声と共に、娘の頭越し、「最愛」の彼の半泣きの笑顔が近づいて、額に優しいキスが降ってきた。 【Ⅲ.甘いお別れ 了】
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