晴れ所により雷雨

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晴れ所により雷雨

退職願を提出して2週間後。 私は朝の天気予報を見て、鞄に折り畳み傘を忍ばせた。 今日の天気は、晴れ所により雷雨。 雷雨って… 思わず苦笑してしまう。 ゲリラ豪雨とかあるのかな。 午前中はとても蒸し暑くて、外出先から戻る営業さんたちは汗をたっぷりかいていた。 けれど、当たって欲しくない予報ほど当たるもので、夕方5時過ぎから雲行きが怪しくなり、私が帰ろうとする6時過ぎには、見事に激しい雷雨となっていた。 会社を出ようとエレベーターを1階で降りると、速水課長がエントランスから自動ドア越しに外を眺めている。 「お疲れ様です。」 私が声を掛けると、速水課長は振り返って、 「ああ、お疲れ様。  立川さん、用意がいいんだな。」 と私の手元を見て言った。 傘、忘れたのかな? 「あの、傘ないんですか?」 私が尋ねると、 「ああ。でも、俄雨だと思うから、  少し待ってみるよ。」 といつもの優しい笑顔で答える。 私は右手の傘を少し持ち上げて言った。 「よかったら、駅まで一緒にどうですか?」 課長は少し固まって、 「いいのか?」 と私の目を見る。 私が無言で頷くのを見ると、課長は私から傘を受け取って、差してくれた。
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