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それから…何れ程の時が過ぎたのだろう?
地を打つ雨が徐々に穏やかになり、雲の切れ間から、不意に陽射しが洩れてきた。
「雨、やみましたね。」
「はい。凄かったですね。」
あまりにも自然に交わされた言葉に、二人は束の間、微笑を分け合う。
「傘…持っていらしたのに。もしかして、私が断ったから??」
──青年は、答えの代わりに曖昧な笑みを浮かべる。彼女は、そこにさり気ない優しさを見た。豪雨の中、ひとり雨宿りする女性を…彼は、放って置けなかったのだろう。
「…ごめんなさい、逆に気を使わせちゃったみたいで。」
「良いんです。あの雨じゃ、傘があってもきっと濡れていた。」
そう言うと。彼は、また優しく微笑む。
見る間に晴れ渡る空は、僅かな蟠りすら消してゆくようだった。
他愛ない会話が、互いの距離を急速に縮めていく。
そして──。
彼女は、不意に話題を変えた。
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