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[起]セイテン ノ ヘキレキ
雨粒、ぽつり。
天から落ちて、彼女の足元を濡らす。
掌を上に向けて、ふと仰いだ空は鉛色──
垂れ籠める雲に陽光は遮られ、蒸れた空気が、いっそう不快に纏わりつく。
雨粒、ぽつり。また、ぽつり。
乾いたアスファルトに、水玉模様を描いてゆく。
夏の陽射しに焼けた鋼も、天の洒浄に熱を奪われ、急激に冷やされていった。
あまりにも突然に、天を貫く霹靂。
それが忽ち、篠突く雨に変わる。
足早に過ぎる人の波に急かされて、彼女も又、気忙しく其の場から逃れた。
行く宛も定めず…
唯、雨の礫を避ける様に。
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