11―幕間

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11―幕間

 先生が忽然と姿を消した。  誰がやったのかは何となくだが予想できた。政府側の人間だろうと。  先生がいなくなった今、四人の他の子供たちに伝えなければならないと思った。事の重大さについて。戦争とは何かを。シスターに見つからない様になんてできない。だから、ルシファー様に頼み込んでみた。先生にした事と同じことをしてくれ、と。そうして邪魔な施設の人間を排除する事に成功した。  その後、子供たちを庭に全員集めた。  一から十まで、分かりやすいように丁寧に教えた。質問があれば質問にきちんと答えて。  そうして何時間か掛けて、ようやく話し終えた。  皆動揺していたり、  泣いたり、  怒ったり、  様々な感情がそこには渦巻いていた。  確かにそうだ。  戦争に行かなければならないなんて、酷すぎる話で、小さい子は確実に守り切れるわけではないので大半はきっと死んでしまう。もう分かっているんだ。  それでも、おれらは行くと決めた。  だから、無駄かもしれないけれど、しないよりはましだろうと体力づくりのための訓練を教えることにした。前世の自分達がやったような事を教え込んだ。  何日も掛けて、いっぱい転んで、泣いて、ぶつかり合って、おれらは強く成長しようと努力した。努力を欠かさなかった。  前世での行いは無意味だったが、すべてが無意味だと思えない、今考えればだが。今に繋がっていたんだ。すべて。天使たちの事だって悪魔たちの事だって、すべて今に繋がった話だった。  あの時、演習をした時、おれと対立した赤毛の天使、あれがミカエルさん。ミカエルさんは強い、サマエルが創り出した虚像だとしても、幻像だとしても、ミカエルさんは強いと言う事をどんな風にでも形にしていた。元々天使だった彼なのだから創り出す事が出来た最強の天使の虚像。きっと、本物はもっと強いのかもしれない。当時はそう思っていた。  けれど、今はおれたちにその魔法を授かっている。  天使が力を分けてくれた。  だから、何としてでもやり切るんだ。  自分たちの、最高の実力で挑むしかない。戦争は残酷非道な物だ。何があるかって、死と恐怖の二つしかない。血の海から這い上がって来れるとは限らないし、きっと無理だろう。今度死んでしまえば、きっともう次は無いだろう。断定はできないが。  だから、だからおれたちは全力を尽くし、自分の全てを使い切って死ぬ。それが兵士というものでは無いだろうか。  自分たちは兵士ではない。  軍人でもない。  それでも、立ち向かう勇気は人一倍あると思っている。  進もう。  困難に立ち向かう勇気こそ、おれたちを突き動かす鍵となるように、無意味だと分かっていても努力を怠ってはならない。  もう半年は経過しただろうか。  子供たちは、少しずつだが体力は向上してきている。魔力はどうにもできないが、魔法の使い方もたくさん習った。今はもう先生はいないから、魔法の応用を自らで学んだオーウェンやルークたちに習いながら練習した。技術力と言うのも強くなるための手段の一つ。知識も技術力もどちらも兼ね揃えたうえで、戦略も練ることが大切。色々なプランを立てて、計画通りに行かなくたっていい。行うことが大事だから。  もう時間は限られていて残りわずかしかない。  それまでで、自分たちの全力を尽くす事にだけ精神力を使う事にしよう。  天使たちもきっと見守っていてくれることだろう。  天使たちが裏切るなんてことはきっと無いだろうから。     *  残り、約半年。  戦争をすると言われる年まで僅かしかない。  私は焦っていた。  ルシファーがいつ動くか分からないから。  「……どうしたものか」  大量の死者が出るだろうと予想されるので、アズラーイールはそれに対しての処理を準備するために今向かっている。  イスラーフィールは世界の終わりを告げる六回目のラッパを吹く為に下界へ行っている。  ラファエルとアリエルには戦争間近になってから用件を伝えに行こう。彼らには、あの五人を癒して、生きていられるように努力してもらいたかったのだ。きっと無理だろうが。  私は神に報告を済ませた後、予言を聞いた。やはり、戦争は必ず来年、つまり約半年後に起こると言う事が予想される。それに乗じて、ルシファーも必ず尻尾を出す。  彼が本格的に動き出す前に、徹底的に排除しなければならない。でも、また同じ事になりかねない。  もう彼らにはしっかりと生き延びてもらいたいのだが。  だから、戦争なんて行くなと忠告したのに。  彼らは忠告を無視した。  ならば、こちら側も容赦はしない。
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