31 恋心

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31 恋心

 (あー。乙女に会いてえなあ)  初めて身体を重ねてまた別れた後、ネットゲーム内で会うことはあったが、今まで以上に☆乙女☆に会いたい気持ちが募っていった。  毎日がこれまでよりも充実してきた気がする。(こんな気持ち不思議だ) 一人でいる気ままな気楽さが嫌いではないがふと想う☆乙女☆が愛しく、無意識に身体の奥から湧いてくる胸の高鳴りが正樹を熱くさせた。  誰かに言いふらしたくなるような気持ちがしてしまい、ネットゲームにログインしていたミストを捕まえて話した。相手が☆乙女☆だとは言わなかったが。  ミストは『リア充おめw』と言った。  月に一回か二回だけのデートでなんとか一年が過ぎようとしていた。正樹は今年から水泳部の顧問を任されていた。まだクラスを受け持っていなかったが去年より学校にいる時間が増えた。(あまり会えないかもな)  責任のある立場が正樹の仕事に対するモチベーションを上げていた。☆乙女☆も正樹が仕事を頑張っていることを喜んでくれている。  ☆乙女☆も保育園で給食を作ることがどれだけ大変か話した。0歳児から六歳児までの食生活の違いやら乳幼児、個人個人のアレルギー対応など、単純に調理をするだけではない仕事内容に正樹は自分の仕事とは違う大変さに感心していた。 「アレルギーってほんと怖いんだ。命に係わるからね」 「神経使うな」  ゲームの中でも昔から☆乙女☆は、回復すること命を守ることに熱心だったと正樹は思い出していた。(天職なんだろなあ)  遠距離恋愛で滅多に会えず抱き合えなくても、お互いに頑張っていると思うと寂しくはなかった。
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